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□陽の当たる場所5
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「あぁぁ……」
思わず、落胆の声が漏れる。
無情にも告げられる
「ごめんねぇ、もう売り切れなのよ」
というおばちゃんの言葉に多大なショックを受けつつ僕は食べることを諦めて保健室に向かう。
別に一食抜いたくらいどうってことはない。
どうってことはないが食えるなら食いたい。
この思いも保健室に連れて行く。そこには僕の良き理解者がいるから。
―
戸を開けると新野先生と下級生がいた。
いや、当番だから居るのは当たり前なんだけど、正直邪魔。
「あ、善法寺先輩どうされたんですか?」
僕を優しい先輩だと思い込んでにこやかに話しかけてくる。
始めは計算でやってたけど、今や条件反射で微笑み返す。
あれ?僕、普通にいい先輩?
「いや、お昼食べ損ねてね。暇になったから来たんだ。僕が当番代わるから遊んでおいで」
「え、でも」
ガキのくせに遠慮とかいらないです。
しかも明らかに上っ面だけの遠慮なんかむしろ迷惑。
なんてこと思ってると悟られないようにやっぱり笑顔。
「遠慮なんていいんだよ。どうせ休みだからそう人も来ないし、それに新野先生にお話しもあるから」
「左近くん、伊作くんもこう言ってることだし代わってもらったらどうかな?」
有り難うごさいます新野先生!さすが良き理解者。
新野先生の言葉でやっと腰を上げる左近。もしかして僕、舐められてる?
「あ、じゃあ先輩、お願いします」
うんうん。素直に出てけ。
笑顔で送り出し、戸が閉まった瞬間、笑顔を無くす。
新野先生は僕の本性を知っているから躊躇い無く自分の表情を出すことが出来る。
そういう意味でも僕は保健室が好きだ。
気配が完全に消えてから、何があったんだい?と新野先生が口を開く。
待ってました、そのお言葉。
自分から喋るのは躊躇いがあるが聞かれてしまえばなんとも無くなる。