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□届かぬ距離・前
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先輩、私は今年十八になりました。

三年前…――
私は今日もいつもと変りなくつまらない時間を過ごしていた。
午後、担任の教師に学園長が呼んでいると言われ学園長室へ向かった。
課題は終わった。卒業試験にはまだ早い。急な仕事か注意される事でもしたか。
否、何故呼ばれたのかは分かっている。ただそれを、認めたくないだけ。
考えているうちに学園長室に着いた。
部屋には学園長先生、山田先生、潮江先輩が待っていた。
潮江先輩が学園に来たと聞いた時から妙な胸騒ぎはしていたのだ。
潮江先輩の表情は暗く俯いていたが私が前で正座をするとゆっくり顔を上げて重い口を開いた。
七松先輩が亡くなったとの知らせだった。
私は少し泣いたが、あまり驚かなかった。
「すまん、守れなかった。」
潮江先輩は言って項垂れた。
先生方は眉間に皺を寄せ暗い顔をしていた。
そして学園長先生は一冊の名簿に先輩の名前を書き加えた。
「これは死んだ卒業生の名簿だ」と、「絶対にこの名簿に加わるな」と先生方はおっしゃった。
噂はすぐに広まり、私と七松先輩の事を知っていた三木エ門と喜八郎は私が後を追うのではと心配していた。
だが私は死ぬ気などなかった。
私が後を追っても喜ぶ人ではないし、あの人が学園を離れた時からなんとなくこの日を予想していたから。
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