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□届かぬ距離・後
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―――ごめん、滝。

事は半年前。
おれの勤めている城と仙ちゃんといさっくん達の勤める城が戦をする事になった。
文次に言ったら怒られそうだけど、正直嫌だった。
級友だろうが関係ないこの世界。
殺し合うのも珍しい事じゃない。
会いたくない人ほど会ってしまう、この狭い世の中。
味方の忍者を無表情で殺しているいさっくんに気を取られ、油断した――――。
『滝、おれはお前を離さない。おれにはお前しか居ないんだ』
でも、お前はそうじゃない。
半年に一度会うだけでも辛そうな顔をする。
滝、お前はおれの顔を見るのも嫌なのか?
考えて見ればこの関係だって一方的なものだった。
だから会いに来る回数減らしたんだ。
けど、『先輩、私の事などいいから幸せになって下さい。』って。
それはおれのため?
それとも自分のため?
おれは馬鹿だから分からないけど、自分の気持ちだけははっきり分かる。
『嫌だ別れたくない、おれはお前を離さないって言っただろ。おれは滝が好きなんだ』
これも迷惑だった?
そう言えば滝から「好きだ」って言ってもらった事が無い。
でも、お前には聞けなかった。
好きじゃないと言われるのが怖かったから。
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