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□その男、能天気につき。
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強く、湿った嫌な風が吹く。
木々が茂りが暖かい日を遮る静かな森の中。
学園長に頼まれたお使い帰りの小松田秀作は相手から預かった
大切な、やけに量の多い手紙を道に撒き散らしていた。
「ああ!それ以上飛ばないでー!」
手紙を拾い拾い進む秀作の耳にキンッと澄んだ金属音が聞こえる、と同時に足元に手裏剣が刺さった。
「………あれっ手裏剣?なんで降って…?」
「小松田くん、大丈夫かい?」
頭の上から降ってくる声。
反射的に上を向き声の主を確認する。
「あ、利吉さん。お久しぶりですね。
今ってお仕事中なんですか?」
急に頭の上から声を掛けたと言うのに特に驚きのない秀作に、
利吉は本当に神経の図太い奴だなと喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。
「今は仕事中じゃないよ。…キミは相ッ変わらずマイペースだね。」
営業スマイルを浮かべ、きっと通じないだろうイヤミを言ってみた。
「あ、そういえばこの手裏剣って利吉さんが投げたんですか?」
「……その手裏剣は私の投げたものじゃないよ。誰かがキミを狙って投げたものだ。」
「へ?僕を狙って?」
「そう、キミが…」
そこで区切り、足元にある一枚の紙を拾い秀作の目の前に突きつけた。
「キミが手紙を拾っているからだ。」
秀作は利吉から手紙を受け取り顔を見上げて聞く。
「森の中で手紙を拾うと手裏剣で狙われるんですか??」
尤もな疑問だが言葉にするとかなり間抜けに聞こえる。
「そんなわけないだろ。キミが狙われる理由は、キミを狙っている奴らがキミの手紙を
撒き散らしている範囲内に密書を落としたからだ。」
「はあ、それでなぜ僕が狙われるんでしょうか?」
「…………。」
全く分からないというように首を傾げる秀作に利吉は苛立ちを通り越し呆れていた。
「あの〜利吉さん?」
秀作は反対側に首を傾げ利吉を呼ぶ。
利吉としてはもう話したくなかったが仕方なく説 明をする。
「…キミが今持っている手紙の中に密書があるのか、
まだ拾ってないがこれから拾われ たら後々面倒になるから、今の内にキミを始末しようという考えだろう。」
まだ首を傾げ疑問符を浮かべる秀作に利吉はどう説明すればいいのか分からず納得させ ることを諦めた。
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