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□タカ丸の受難
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どんよりと重たい雲が空を覆う憂鬱な朝。毎日同じ顔を拝む集団登校。鬱になりそうだ。

「おはようタカ丸くん」

毎日の繰り返しですっかり顔を覚えたボランティアのおばさんが、いつの間にか覚えた俺の名前を呼ぶ。

「おはようございます」

おばさんが毎日繰り返すように、俺も毎日繰り返す。挨拶だから仕方ないが、自分も変わらず繰り返していることに苛立ちを覚えた。

「中坊にもなって集団登校か…。」

「仕方ないだろー、小中とおんなし学校なんだもん」

小さく呟いたつもりだったが、隣りに居た小平太には聞こえていたようだ。

「学校同じでも、こっちは免除して欲しいっての」

「それで何かあったら、同じ学校なのになんで集団登校してないのか問題になるだろ」

「問題なんて知らねえよ〜」

この位の年になると、決まりを守らないのが格好良いと勘違いする奴がいる。そんな奴の為に待ち時間を伸ばすことが殆どだ。

「これほど無駄な時間ってないよな」

「仕方ないって。これで置いていって誘拐とかされたら嫌だろ?」

「こない奴は来ないし、何もない方がつまらないじゃん」

「なに言ってんの」


実のない話し、いつもと変わらない道のり、変わらなかったんだ。この時は何も。


「今日は何かあったっけか」
「身体測定があるから体操服を持って来いって言われたくらいかな」

ブーン
いつもなら、エンジン音なんて気にしないのに、今日は何故だか振り返った。



だらだらと最後尾を歩いていた俺たちに、車が突っ込んできていた。












「で、起きたら病院のベットの上だったってわけですね」

病院で気がついた俺の周りには、警察とか、足になんか巻いてる医者とか、泣いてる親とか、先生とか。なんかいっぱいいた。

体が痛いとかの前に、小平太はどうしたのか心配で、医者とか先生に聞いた。

だって俺が巻き込んだみたいだったから、何か起きたらいいって思ったから。


小平太は俺より全然軽い怪我だったらしい。
罪の意識かヒーロー気分だったのか、俺は小平太を庇った記憶がある。そのお陰で助かっていたならいいなと思っていた。

事故に遭ったのは、俺たち含めて5人。俺が一番ひどい怪我で当分入院だと言われた。







俺に直接関係ない何かが起きればいいなと思っただけのに








その後の検査で肝臓病が見つかって、更に学校から遠ざかった。






これは3年前の話
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