TEXTU

□手。
1ページ/2ページ

ボクはいらないんだ。
ボクはうっとうしいんだって。邪魔なんだって。
誰かがやったイタズラは全部ボクのせい。
ボクを叩いたりして笑ってる。
人間の友だちは出来ないんだって思って、ナメさんと友だちになったのに、ナメさん達も気持ち悪いって。
笑いながら、ゴミみたいに踏んでしまう。ボクのことは踏んでもいいけど、ナメさん達は死んじゃうから。
みんなはボクの大切な友だちを殺してしまう。
みんなの友だちが人間ってだけで。
ボクの友だちがナメさんってだけで。

ボクは初めて、

手をあげた。


その瞬間から、ボクの居場所はなくなった。








「って思ったけど、与四郎先輩の隣にはボクの居場所があったんですねー」

「そおだな」

「いじめられてよかった。そうじゃなければ、与四郎先輩に会うこともなかったし」

「俺のこと好きだなぁー」

「大好き!」

「友だちか?」

「一番大切な、大好きな人!」

「俺もだ」

「でも、引越しだって」

「ああ」

「与四郎先輩に会えなくなるのは悲しいな」

「寂しいな」

「いっぱい手紙書くから、お返事くださいね」

「もちろん、必ず書く」

「休みになったら来るから、ボクの事忘れないで」

「忘れるわけねぇ」

「それから、ボクの居場所とっておいてください」

「うん」

「誰もボク以上に近づけないで」

「喜三太の気が済むまで、俺は独りぼっちだな」

「ボクも近づけないから」

「おいおい、そんな悲しいこというなよ。それじゃ引っ越す意味ねぇだろ?」

「でも、」

「ちゃんと友だち作って安心させてくれ。それが約束だ」

「……はい。」


これは今から2年前の話。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ