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□ホストクラブ「夜行」・2
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あの後、俺は志々尾(呼び捨てでいいし、敬語いらないと言われた。)の家に泊めさせてもらった。
そのお礼と言えるほどのことではないが、朝ご飯を作っておき、そのすぐそばに『ありがとうございました。良かったら食べてください』と書いたメモ紙を置いて、俺は朝早く家を出た。
…もうあそこに行くことはないだろうと思ってたのに…。
「何でまた行かなきゃ行けないの?父さん。」
「だって仕方ないよ。心配なんだもの、正守が。」
この前までそんなことなかったのに…まさか!
「良い頃合いだと思って…?」
そうか!だってこの歳になるまで、兄貴が心配なんて言うことは俺の前ではなかったし(利守とジジイの前では知らねぇけど)、この歳になってから『正守、元気でやってるかな。ねぇ?良守。』と言い出したし……いや、待てよ。数年経ったから、どうしているのかな、と思い始めたのでは…。
ーチラッ
俺は父さんの顔を見た。
「何だい?」
と言った父さんの顔は…天使のような微笑みだった。
うん、やっぱ俺の勘違いか。最近考えすぎなんだな。いや、待て、だからといって、行くのは断固拒否だ。
「この前…ってか先週行ったから、しばらくは「良守、先週志々尾君って子の所に泊まったんだって?」
俺は一瞬、固まった。あれ?何故父さんがそんな事知ってんだ?俺は…うん、話してない話してない。
「正守から聞いたんだ。その子にお礼をしないとね。」
…兄貴の連絡先知ってんなら、俺行かなくて良いよな…。
「まあ、それはまた後日「だめだよ。お礼はすぐにしないと。だから、ね?」
あれ?この前もこの調子で拒否出来なかった気が…。
結局俺はまたあそこに行くことになった。
兄貴には既に行くことを連絡していたらしく(俺には拒否権がないってことだな。)、関係者以外立ち入り禁止の部屋(休憩室)の入口から入って良いことになった。(そうしないと、また女装とかされそうじゃん?)
俺は、今日から毎週何かとこのドアを使うんじゃないかな、なんて冗談にそう思った。…それが現実になるなんて、この時の俺はまだ知らなかったんだ。
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