TEXTU

□クリスマス2008・3
2ページ/4ページ

「どこか店に入る」
「早く選べよたうふくん」
竹谷は呆れたように言い、投げ出した帽子を拾い集めた。
「最後まで聞けって!」
「わかったよ、たうふくん。買い物終わったら聞いてやるから」
ねこ耳を付けたヤツに諭すように肩を叩かれイラっとするが感情に流されてる場合じゃない。
おれの部屋に竹谷と鉢屋が来て片っ端から荒らしていくのを止めつつ過ごすぐったりなクリスマスになるか、竹谷と鉢屋の奇行を気にせず過ごすクリスマスになるかが掛かっている。
「まあ聞けって。店では鉢屋にだけ奢ればいいだろ?雷蔵は優しいからきっと分かってくれる。ケーキをホールで買うより安いし、ツリーだって要らない。ちなみに奢るのはお前な。鉢屋からの好感度が上がってお前嬉しい、金掛からなくておれ嬉しい」
「自分勝手な」
竹谷がしぶる。
「一人分くらい男らしく奢れよー」
「まあいい。貸し一つな」
ねこ耳のままふんぞり返って言う竹谷。腹立たしいのは、どう考えても体格に似合わないねこ耳のせいだろうか?
とりあえず弁慶の泣き所に蹴りを決めてみる。
「いてッ賛成してやったのに蹴るってなんだよ」
「すまん、足が滑ったらしい」
白々しく言ってみるが、竹谷は面倒くさくなったのかぷんぷんと言いながら、帽子をいくつか持ってレジへと向かった。
「竹谷、ねこ耳」
「お前も欲しいの?」
「誰が使うかッ付けたままだって言ってんだよ」
指を指すが、竹谷はポンポンと叩くだけで戻しはせず、結局レジを通ってしまった。
「それにしても、おぬしも悪よのう」
「?」
「雷蔵の優しさにつけ込むとは…心が痛まないのか?」
「そういう言い方止めてくれよ。金がないんだからしょうがないだろ。それより外行くんだからねこ耳は勘弁してくれ」
おれが袋を広げるとあいよーと案外素直にしまってくれた。これが鉢屋なら絶対にしまわない。
その上腕を掴んで他人のフリもさせてくれない。まだコイツのが可愛げがあるかも知れないな。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ