陰陽の華嫁

□玖
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し、と
しと

と、
小さな雨粒が降り落つる音色が
障子越しに、黄金と翡翠の鼓膜を心地良く揺らした。
手元に差し出された薄陶器の中、澄んだ緑茶が踊る。
それに口付ける当主を
黄金は僅かばかり緊張した面持ちで、見つめていた。

コト、リ
木造りの器に落ち着かせる、薄陶器。




「−−陰陽師としての修業を受けたい。と、言う事かな?」

「はい」

「…精神、肉体共に厳しいものとなる。それでも
この途を選ぶのだね」




静寂に似た響きの低音に
確かな意志を宿して頷く十夜の
短な椿の紅の髪先が、仄か揺れる。
膝を覆う小豆色の着物を、指先で握り締めた。




「…オレ、強くなりたいんです。
陰陽師ってのは、危険な仕事なのも分かってる。
生半可な覚悟じゃ出来ねぇのも…。
だけど…それでも」

「構わないと?」




問い掛けに、偽り無く頭を下ろし
翡翠に重ねられる日輪の輝きは、鈴の彩。
祖父の面影を色濃く残した、その瞳に
揺るぎ無き覚悟を捉える。




−−血は、争えぬのか




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