陰陽の華嫁
□参
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翡翠の瞳が一度伏せられ、ゆっくりと…瞼を開く。
耳に柔く掛けられた濃藍が
さら、り
揺れた。
「なぜ、男であり…数の名も継がぬ光代が
跡継ぎの嫁であるのか、疑問に思ったことだろう」
「…まぁ」
それよりも、あの漆黒の少年の拒絶が胸に引っ掛かっている。
そうは思いながらも、声音で伝える事はせず
十夜は微かな肯定を紡いだ。
僅かに逸らされた黄金に、苦く口角を上げる当主。
だが、甥のそんな素直な瞳の輝きに見つけた
小さな灯。
「…崇爾家はね、始祖の代から四神の加護を受けている。
朱雀・青龍・白虎に玄武。
家系の中でも霊力の強い者が、それらを使役する事が出来るわけだが…」
「??」
「まぁ、それはまた後に話そうか。
…陰陽師として人ならざる者と近しい所為か
稀に男でありながら、子を宿す事の出来る者が産まれてくる事がある。
光代はそれなんだ」
「え!?っと、何だっけ…両性具有ってヤツ!?」
とても、あの少年がそうには見えなかったが…−−
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