陰陽の華嫁

□参
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驚愕を隠さぬ黄金に、当主は小さく声を立てて笑った。
空気を震わす、心地良い低音。




「いいや、彼はれっきとした男の子だよ。
言い方を間違ってしまったね……彼が宿す子は
霊力の結晶体。
強い霊力を持つ者と触れ合う事で産まれる生命」




再度、直された紡ぎ。
十夜はそれを理解するが、やはり信じ難い事実に
首筋に掛かる紅玉の彩を指先で掻き上げるだけ。

未だ疑問符を頭上に漂わせる黄金に、当主は言葉を紡ぎ続ける。




「崇爾家は四神の加護を受けていると教えたね。
先ほど息子が喚び出した“白虎”。
あれ等は誰でも喚べるわけではない。
四神が認めた者のみが使役できる、特別な式神だ。
そして、光代のような体質の持ち主を、四神の寵愛を受けた者として
“神子姫(ミコヒメ)”と呼んでいる。

神子姫は、家系の中で最も強力な霊力を持つ者に
嫁ぐ掟がある」

「じゃあ、アイツ…萬月だっけ?…が一番強いから光代の許婚なんスか」




掛けた問いに頷いた当主の、揺れる濃藍。






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