陰陽の華嫁

□伍
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夜食の用意が出来たとの、女中の丁寧な声音の伝えに
案内されるまま、十夜は綺麗に磨かれた床板を歩む。
キシ、キシ…
と、微かな足音に呼応するように
壁に飾られた行灯の灯火が、揺れていた。

点在するそれらに仄かに照らされた
薄暗い廊下。
見慣れぬその光景に、あるホラーゲームを思い出す。
目前に在る薄紅の着物と
手元に古びた投影機が無い事に
安堵の吐息を吐いた。


…それにしても、動き辛い。
足首で揺れる小豆色の着物の裾を、指先で弄る。
貝の口で結ばれた、黒茶の角帯。
当主から部屋着にと贈られた着流しは
和服を着慣れぬ身体には、少し窮屈だ。




「お待たせいたしました、十夜様。御夕食はこちらの間になります」




辿り着いた一つの障子を引く、女中の声音に
呼ばれた黄金は、視界に映った光景に
一瞬、息を呑む。






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