陰陽の華嫁
□陸
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静寂の夜の帳に抱かれた日本庭園を、緩やかな月灯が照らす。
離れた場所から鼓膜に届く、女中頭の通る声音。
慌ただしい足音が、下働きの者達が避難へと移っている事を教えた。
「妖気の数は少ない…しかも小物ばっかやな。
光(コウ)ちゃんまで呼ぶ必要あったん?」
「人の嫁を馴れ馴れしく呼ぶな!」
「よ…萬月…」
「ほら、止めなよ二人共。光代が困ってるよ」
叢雲たゆたう、夜空の下。
年若い陰陽師の戯れの声音。
しかし、その穏やかさを切り裂く数多の影が空を踊る。
細月を背負う、火の鼠。
「……来る」
鼓膜を揺らす低音の響き。
指の先の札が、主の呼び掛けに姿を変えた。
舞い踊るは−−…朱
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