陰陽の華嫁

□漆
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少年の肩口を抉る、火鼠の鋭利な牙先。
裂かれた肌から滲む鮮血が、萌葱色の着物を染める。
浅くはない傷口を走る痛みに、微かな呻きを漏らした漆黒に
十夜は咄嗟に指先を伸ばした。
だが、それが目的に触れる前に
眉間を顰めた夜の彩が黄金を制す。




「お触れに、ならないで下さい…」

「…ッ」




じわ、り
駆ける痛みを堪える身体に、指の腹で触れる事すら叶わず
歯痒い感情を、十夜は拳で握り締めた。

そんな黄金の姿を視界に捉え、漆黒は一度
僅かに微笑み
肩口に牙を突き立てたまま動かぬ物の怪を、震える指先で
力任せに引き抜く。
弧を描く…紅。
畳に投げられた火鼠は震え出し、鼓膜を低く揺さぶる呻きを上げた。




『ピ、ギ…ギ…ギィィイィィッ!!』




ピシ…ピシッ
と、のた打つ物の怪の肉体に走る
叩き割られた陶器の罅。
悲痛な音色を奏でて、破裂したそれは
光の粒子と成って消えて逝った。



−−黒龍の呪い

その肌に触れた者は、黒龍の霊力に負ければ
待つは……死




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