陰陽の華嫁

□捌
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冷めた
氷塊の視線が、夜の彩を突き刺す。
俯き、微かな怯えを宿した光代に歩み寄った千蔭は
その肩口を覆う薄色の布切れを、取り去った。

夜色の瞳を見開いた少年の姿に
黄金が咄嗟に小父へと反感を紡ごうとした時。
…視界に捉えた、傷口。
裂けた萌葱色の下に刻まれた
…刻まれていた筈の、傷痕は
まるで刻を戻すかのように…一枚の皮膚へと、繋がっていく。

その有り得ぬ光景に
十夜は、刹那
息を呑んだ。

吐息が喉奥を擦れる微かな音色に
漆黒の肩が
びく、り
震える。




「小父上…ッ!」

「何を必死に庇う?これが神子姫の本当の姿だろう。
見たまえ、黒龍の呪いで傷を負うことすらない」

「ッ、!!」




己の許婚に投げられる、灯の通わぬ言の葉達に
その 瞳に
萬月は憤怒の感情露わに唇を開いた。

…だが、そこから声音が紡がれ掛けた時。
濃藍が纏う紫紺の袖を、仄か、指先が引く。
控え目でありながら…
抗えぬその感触に、白銀の輝きが映すのは
夜色。




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