陰陽の華嫁

□拾
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自身が見立て、送ったその彩は
少年の穏やかな夜色に、良く馴染んでいた。
包帯の純白を覗かせる、胸元

ふぁさ、り
柔らかな淡黄が触れる。

大輪の花
夏の、調べ




「土産だ」

「っ…俺、に?」

「他に誰がいる。…お前の、好きな花だろう」




不意に、己にと贈られた…甘夏の潤いの
向日葵の、花束。
気恥ずかしさを纏いながらも
紡がれる音色の柔さに
胸奥を包む、日の輪の暖かさ…。

淡黄を傷付けぬように
緩く
だが、確かに
鶸色に包まれた両腕で
抱き締めて。

光代は
ふわ、り
唇を綻ばせた。





「ありがとう」





目尻を
淡い、撫子色に染めて
小花のように笑む、許婚。

とく、り…
高鳴る
鼓動



−−この刻が、永久に続くのなら
恐らく
自分は何であろうと
するのだろう。

叶わぬ祈りだと…誰かが嘲笑おうとも
穏やかな夜の彩が
こうして、柔く微笑んで居られるのなら……−−




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