陰陽の華嫁
□拾壱
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屋敷とは別に建てられた木造りの道場。
履き慣れぬ草履を脱いで、床板に足を掛ける。
冷えたそれが、熱い足裏に心地良い…。
と、長閑に感じた
刹那
−−ヒュッ
風を切る 奏で
鼓膜に届いたその音に、十夜は反射的に身体を横に投げた。
その一拍後
鋭利な刃物が木板を抉った、鈍い音。
つい一瞬前まで居た地に無慈悲に刺さる、苦無(クナイ)に
血の気が引いていく。
「は!?ぇ…ちょっ、と…何だコリャァァーッ!?」
漫画でしか見た事のない武器の存在に、混乱する思考。
落ち着く事もままならない十夜を目掛け
再び、上空から幾つもの刃先が襲い掛かった。
「うぉっ!」
薄くはない床板を容易く傷付ける刃物達に、感じるは
生命の危機。
素速いそれらの、鋭利な鈍色を視界には捉えるが
先の軌道を読む事など出来る筈も、なく。
唯、脳が伝える危うい本能的な直感を盾に
椿の彩の髪先を揺らす。
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