陰陽の華嫁

□拾壱
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「クッソ…!」




無情な、怒涛の攻撃

終焉の見えぬそれに、整った唇から零れる
苛立ちを孕んだ舌打ち。目紛るしく変わる視界の中…唯一、見つけた応戦する手段に
十夜は一か八かに賭け、指先を伸ばした。



…掌に収まる、淡い希望は
壁に飾られた
一振りの
竹刀。

決して離さぬように枇杷茶の柄を握り締め
瞬時に、構える。
脳裏に蘇る…祖母に叩き込まれた護身術の、数々。
その記憶の頁の内でも
最も攻撃性の高い
−−剣技


…す、ぅ

喉奥を通る
澄んだ 吐息

キュ、ッ

純白の足袋
床板
−−鳴らし





「…臨兵闘者皆陣列在前−−ハッ!」




枇杷茶の彩の、竹刀
射手座の流星
軌跡を描く。

キィ、ン…ッ!

四方八方から黄金を襲った苦無は
悲痛な鳴き声を上げ、弾け飛んだ。


掌から滲む柄の熱…。
止んだ、嵐の攻撃…。
額を僅か濡らす雫に、短な椿の紅の前髪が
湿る。

…ほ、ぅ

這い出した身の危機に、一つ、安堵の吐息を吐いた。
張り詰めた緊張の細糸が解け、冷えた床板に身を委ねる。




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