陰陽の華嫁

□拾弐
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シャラ、ン

涼やかな音色を鳴らし、当主の指先に掛けられ
揺れる苦無。




「陰陽術の元となるのは、陰陽五行(オンミョウゴギョウ)。

陰は、受動
陽は、能動
この相反する二つの気は、術の核となるものであり
森羅万象の“秩序”。
“生成消滅”を司っている。

そして、五行は
木・火・土・金・水、の五要素。
霊力の、言わば属性。

森羅万象の“変化”を司っている」




鼓膜に届けられる言葉達に
小首を傾げるは、椿の彩。

聴き慣れぬ言葉の理解に
必死に努める甥の姿を、視界に捉え
当主は苦く口角を上げた。




「十夜くんが使った九字は、陰陽の段階でしかない。
霊気を祓う九字は
生成消滅の“消滅”に当たる。

そこに、五行の“変化”を加えると…」




ト、スッ

整った指先の
枷を失くした鋭利な刃物が、床板を傷付ける。


すら、り

上げられた
人差し指と、中指。
凛とした
翡翠の、静寂の輝き。




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