陰陽の華嫁
□拾参
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流星の軌跡を描いた、燐火。
弾け飛んだ苦無の金色を
紅蓮の灯火が、喰らう。
不規則に破けた袖
はら、り
舞い
純白の足袋
床板、擦り
翡翠へと踏み込んだ。
−−キィ、ンッ!
濃藍で彩られた首筋、目掛け
薙いだ両刃の剣が
一つの鈍色と擦れ合う
甲高い鳴き声。
…ぽた、り
額から滲んだ、水滴が
床板を濡らす…。
「合格だ。良く、出来たね」
「はは…ギリギリっス」
鼓膜を揺らす、穏やかな低温に
苦く笑んだ十夜の
短な椿の彩の髪を、整った指先が柔く梳く。
触れた箇所から滲む温度に…
唇から零れる、疲労を乗せた安堵の吐息。
「霊力、そして式神は、覚悟を持つ者にしか応えない。
君に…その覚悟があるのかどうか
試させてもらった」
「……覚、悟……」
刻の砂が尽き掛けた、刹那
脳裏に浮かんだのは
…穏やかな漆黒。
( 約束を、した )
今までのように、己の為に強くなるのでは
ない。
あの少年を護る為
その為に、
この途を選んだのだ…
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