陰陽の華嫁
□拾参
2ページ/5ページ
剣の燻し銀の柄を握り締める、指先に力を込める。
黄金が喚び出したその紅蓮を
じ、っ…
と視界に映し
当主は唇を開いた。
「…これは…また、珍しい」
「ぇ?」
「式神は通常、妖(アヤカシ)を召還し
その妖が武器へと形状変化する。
だが、君のこの剣は、妖ではない」
「ぇ、じゃあ式神じゃないって事っスか!?」
式神の召還に失敗してしまったのかという、焦燥を
日の輪の瞳に滲ませる甥に
幼子をあやすように、萬人は翡翠を細める。
「いや、これも式神の一種だ。
妖の召還ではなく、札に込めた己の霊力を喚び出す
立派な陰陽術だよ」
「ぁ…焦ったぜ…」
心底、安堵し
胸を撫で下ろす甥の姿に
仄かに
苦く、口角を上げる当主。
−−濃度の強い霊力を必要とする
無機物の召還を成し得たのは
歴代当主の中でも、十夜の祖父“嗣之衣(シノエ)”のみ。
火行の、両刃の剣
日輪の輝きを放つ、黄金の瞳
…こんなにも、似通るものなのか…
.