陰陽の華嫁

□拾参
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剣の燻し銀の柄を握り締める、指先に力を込める。
黄金が喚び出したその紅蓮を
じ、っ…
と視界に映し
当主は唇を開いた。




「…これは…また、珍しい」

「ぇ?」

「式神は通常、妖(アヤカシ)を召還し
その妖が武器へと形状変化する。
だが、君のこの剣は、妖ではない」

「ぇ、じゃあ式神じゃないって事っスか!?」




式神の召還に失敗してしまったのかという、焦燥を
日の輪の瞳に滲ませる甥に
幼子をあやすように、萬人は翡翠を細める。




「いや、これも式神の一種だ。
妖の召還ではなく、札に込めた己の霊力を喚び出す
立派な陰陽術だよ」

「ぁ…焦ったぜ…」




心底、安堵し
胸を撫で下ろす甥の姿に
仄かに
苦く、口角を上げる当主。




−−濃度の強い霊力を必要とする
無機物の召還を成し得たのは
歴代当主の中でも、十夜の祖父“嗣之衣(シノエ)”のみ。

火行の、両刃の剣
日輪の輝きを放つ、黄金の瞳


…こんなにも、似通るものなのか…




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