陰陽の華嫁

□拾四
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小豆色の着物を纏った膝を、正しく折りながら
十夜は、幾つもの好奇の視線に曝されていた。


−−茶の時間だと言われ、赴いた和室には
十程の、既に隠居した崇爾の者達。
年は老いども、その細い瞳に宿る鋭利な輝きは
物の怪との激戦を経験して来た事を教える。
無意識に強張る肩を、茶托に身を委ねた緑茶で
癒やした。

宙で交わる声音達は…聴き慣れぬもの。
年を同じくした濃藍の姿は無く
三人の青年達も、また
翁の紡ぐ声音に混じる。
…どこか、落ち着かない。

見知らぬ者と言葉を交わすのに、違和感を感じる事は
今まで無かった黄金は
何故、こんなにも己の身を、緊張の波が襲うのか
分からなかった。


、ふと
日の輪の瞳で
ゆっくり
と、
室内を見渡す。

…桜の彩が
穏やかな夜色、が
無かった



(今日…居たみてぇだったのに…)



喉奥に沁みる、緑茶が
熱く
感じた。

胸奥に燻る蟠りに、意識が沈み掛けた
刹那。





「失礼いたします。
茶菓子を、ご用意しました」





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