陰陽の華嫁

□拾伍
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家を出て行った女の子供が、神子姫であり
封印から放たれた黒龍が、それを狙った事は崇爾にも伝わり
直ぐに、陰陽師達は向かったが

…時
既に、遅く




「俺は、呪いを受けてしまっていた…。
そして…母は、俺を庇って……

−−俺に、触れてしまったんです」


「…ッ」




喉奥
通、る
吐息は、熱く

十夜の脳裏に過ぎった、朧の夜の
物の怪の最期。
肉体は罅割れ…硝子の破片で砕け散った
あの、夜の……−−


は、ら
はら、り

桜が
揺れる。
右側だけ下ろされた、夜の彩の前髪は
惑う瞳を
唯、隠した。





「俺が神子姫でなければ…っ
俺が、呪いなんて受けなければ…っ

俺が生まれなければ
二人は死ななかったのに…ッ!!」





たらればの、幻夢

父 、母が抱いたのが
己ではなく
別の灯であれば

訪れたのは
穏やかな
幸福、だった。


…喉奥から吐き出した
永久に叶わぬ幻想が
脆く砕けた黒曜石の瞳を、冷えた灼熱で抱く。

溢れる雫は
硝子の…彩

頬を 伝い
床板へ、と







「俺には…想われる価値など、無いんです」







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