陰陽の華嫁

□拾陸
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桜の絹布をすり抜け、視界を照らす日の輪の
目映さ。
瞳を彩るその輝きに、少年は僅か、穏やかな夜色の瞳を細める。


朱色の鳳仙花
ぽろ、り
朝露を飾り。
光代が降らす如雨露の雫を、根で歓びを帯びて
受け止めた。

葉月のそよ風に
揺れる花弁。
見つめる、穏やかな夜色を
聴き慣れた低温が、日輪の輝きで呼ぶ。




「光代!おはよっ」

「!、おはようございます、十夜殿」




小走りに歩み寄る、短かな椿の彩の髪。
若干、開け掛けた小豆色の着物を気にせず
明るい輝きの笑みを浮かべる、新しい家族に
少年は声音を返した。

口角を彩るのは、暖かな微笑み。




「お前、いっつも朝早くから水遣りしてるよなぁ。
こいつ等も、感謝してるぜ!」

「!、そうであるのなら…嬉しいです」


「…光代は、優しいよな」




鼓膜を揺らした、言われ慣れぬ言の葉に
胸奥に滲む暖かさを、感じながらも
否定の音を紡ごうとした
、刹那


−−ヒュ、ウ

流れを乱した、風が
朱色の花弁達を…揺らし
桜の絹布
舞い、踊る




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