陰陽の華嫁

□拾捌
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突如、廻った視界と
寝具に僅か打ち付けた背に、少年は小さな声音を上げ
丸くした夜色の瞳で、向かい合う白銀の瞳を見上げる。

…そして、気付いてしまった。
見下ろす
、その彩が
どこか縋るように、揺らいでいる事を…−−



…はら、り

濃藍の髪先を震わす許嫁の名を、少年が紡ごうとした
刹那。
鼓膜を揺らした…揺らぎの、声音





「…すま、ない…っ」





形整った指先で、寝具に縫い付けられた
手首から伝わる
小さな、震え

ゆ、っくり

強く
…強く
伏せられた瞼

長い睫
、揺れて


滅多に見せぬ許嫁の惑いの姿に、光代は微かに戸惑いを感じながらも
手首を押さえる萬月の指先を
緩やかに、解く。

純白の包帯を纏った指先が伸ばされるのは
端正な頬を彩る、濃藍の髪。
俯く
、菫
その彩を、耳朶に柔く掛けさせ
少年は穏やかな夜色で、閉じられた瞳を見つめた。




「…萬月、謝らなくて良い。
良いんだよ…」

「………」

「何か、あったのか?」




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