陰陽の華嫁

□拾玖
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ほ、う
…ほう


木菟(ミミズク)の、囀り。
闇を纏いし街路
静寂に
、木霊の追い掛け

九つの頭部
にた、り
に、たり…
嘲笑が
月影に揺らぐ。


街灯の上
淡い電光に晒された異形を見上げる青年の、紫水晶の瞳が
月灯の照らしに、麗しの光彩を帯びた。

僅かを後頭部で結い、
髪紐の拘束を持たない残りで、項を覆う
翡翠の髪先
夜風に
、揺れ。




「何や、鬼車かいな。あんなん一人でも十分だっぺ」


「…ちょっ、方言ヒドくないっスか」

「任務で各地を回って染み付いてしまったものだ。
気にするな」

「…はぁ」




境も無く、入り混じった方言を放つ千歳。
思わず声音を紡いでしまった十夜の鼓膜を、千歳と良く似た低音が揺らす。
だが、
その奏では
静寂を緩く纏った
、落ち着きの旋律。

鏡に映したかのように、瓜二つの容姿を持ちながら
重ならぬ雰囲気に、十夜がある種の感心を覚えた
時。




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