陰陽の華嫁
□弐拾
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文月の夜闇を、
朧の月
叢雲が暗、く
彩める。
萬月は、額を鈍く伝う水滴の冷たさを感じながら
刃物の鋭さを帯びた白銀の瞳で
突如その姿を現した影達を、見据えた。
人と区別の付かぬ
、だが
鉛の重さの妖気を纏った…五人の、男。
いや、光代を襲った妖気を合わせれば…六。
その、余りにも人に似通った姿を持つ物の怪は
萬月の記憶の中では、一つしか刻まれていない。
「…鬼…ッ」
「鬼?鬼…鬼、ねぇ。ククッ、クハハハハッ!
勘違いしてもらっちゃぁ困るなぁ。俺達は鬼じゃない。
そうだなぁ…“四凶”とでも、名乗っておこうか」
「四、凶…だと…ッ!?」
濃藍の予想を裏切りの刃で切り裂いたのは、男の嘲笑の声音だった。
重力に反するように、立ち上げられた
男の短な洒落柿(シャレガキ)色の、髪。
その下の、猩々緋(ショウジョウヒ)の彩の瞳を
にた、り…
細め
男は、嗤
嗤う。
薄い唇から告げられた、男達の名に
白銀の瞳は見開かれた。
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