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□clover
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「ただいまー」
「おかえりなさいませ アーシュ様」
いつもの”おかえり”じゃない声。
迎えたのは使用人たちだった。
「あれ?…トーコは?」
「トーコ様なら朝からお出掛けになりましたよ」
「え?
…どこに行ったか分かる?」
「いいえ、存じ上げていません
すぐ戻るとおっしゃっていたのですが…」
心配そうな顔をする使用人たち。
元々明るいトーコはここの使用人たちとも仲がいい。
…たまに妬ける原因なんだけど。
「そっか、ありがと
遠くには行ってないと思うから 僕が捜してくるよ!」
「は…はい、お気をつけて」
くるりと背を向けて扉を閉めた。
遠くには行っていないだろう。
…僕がそう言ったから。
「さて、と…」
とりあえず家から離れて歩いてみる。
…彼女が僕から離れないということは分かっているのに、
…彼女が隣にいないことがこんなにも不安を駆り立てる。
「…まったく、
…見つけたらおしおきだね…」
苦笑しながらきょろきょろと辺りを見回した。
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