短編小説 その他×望美

□君思ふ、だからこそ
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※これは将望のロミジュリ小説です。読む時はそれを踏まえて読んでください。










「将臣君、どうして貴方は"将臣君"なの…?」
「それは俺の台詞だぜ、望美。何でお前が"望美"なんだろうな…」



宿敵同士の家に生まれた私達。
でも…それでも。
気持ちを抑える事なんて出来なかった。

「私、将臣君が」

―  ―



たったその一言が言えない。
でも、人が人を想う気持ちを誰が止める事が出来るのだろうか。
人として当然の気持ちのはずなのに…



「お前、…我慢するな」
「えっ?」
そういうと将臣君は私の頬に手をあててきて。
その瞬間、瞳から涙が頬をつたっていた。
言われるまで気付かなかった…泣いてる事に。

「ごめん、泣いたって、解決する訳じゃ、ない、のに」
「―――っ!」



ぐっ。
すると将臣君は私を引き寄せ、気付いたら将臣君の腕の中にいた。

「将臣く、」
「言っただろ?我慢するなって。」
私の背中を抱く将臣君の腕に力が入った。
…痛いのに、その痛みすら嬉しい。
彼が、側にいてくれているという証だから。

「二人で、二人だけでいる時は何もかも俺にぶちまけていい。
だから溜め込むな。俺も…お前といる時だけは"俺"になれる。」
「――っっ…」
「それに…俺はお前の笑顔が、笑ってる顔が一番だと思うぜ。
だからその顔になれない時はちゃんと見ないから。
こうすれば…俺には見えてないだろ?」

その瞬間、涙が止まらなくなった。
ずっと腕の中で泣き続けた。
その間もずっと抱きしめてくれる彼の優しさに甘えてしまう自分が嫌。
こんな弱い自分が嫌い。

でも"ここ"から離れたくない…








「…ありがとう、もう大丈夫。そろそろ時間だね」

「あぁ。」

離れたくないという気持ちとは裏腹に。
もう戻らないと怪しまれるのもあって彼の腕の中から離れた。


「…また、会える?」
そういうと彼は一瞬驚いた顔をした後、すぐに少し眉をひそめて言った。



「会えると、いいな…」



*―*―*―*―*―*―*―*



「なんでだよ…どうして…」
目の前にいるのは。
紛れも無く自分の大切な人だった。

「俺は、こんなお前と会いたかったんじゃないっっ…」
その彼女の瞳は閉じられたままで。
もう二度と翡翠色の瞳を見ることも。
その瞳に自分が写ることは…ない。



「何でお前が死ななきゃいけない?何で俺を残して逝くんだよ!」
口に出した瞬間、目の前が真っ暗になった。
それは、俺は自分の世界の色を無くした事と一緒で。
そう、"望美"が俺の世界を明るく鮮やかに彩る存在だったんだ。



「…なぁ、望美。」

―これがお前の望んだ事なのか?―

声にならない思いが胸の中いっぱいになってきた。
これは本当に現実なんだろうか?
嫌だ、認めたくないっっ

「答えろ望美!!!」

…虚しくもやはり返事は無く、怒鳴った声だけが自分の脳をこだました。

代わりに思い出したのはアイツの言葉だった。

―私、将臣君が―





俺はいつも望美が言いかけるその言葉をはぐらかしてきた。

だって聞いてしまったら。
きっと後戻り出来なくなる。
家や建前、世間体なんて全て捨ててアイツを何度奪い去りたいと思った事か。



でもそれはただ逃げていただけ。
"自分"から、"望美の気持ち"から。

そのくせに望美が俺の腕の中で泣いてくれる事には喜びを感じてしまうタチの悪さ。



…そう、いつも俺はアイツの優しさに甘えてばっかりだった。

…だからこの胸の痛みは俺への罰なんだろう。
向き合ってこなかった俺に対しての。
だから。





―…また、会える?―

あぁ、解ったよ。
それが今の俺に唯一、お前にしてやれる事だから。

だから…お前の最期の言葉を…叶える。

「待ってろ望美。」



…もし、来世とかでまた巡り逢う事ができたなら。
その時は必ず―-…伝えられたらいいと思った。



*―*―*―*―*―*―*―*



「将、臣く…」
目の前にいるのは。
紛れも無く自分の大切な人だった。
…どうして?嘘だよね?



「ねぇ、そうだよね将臣君!!!」
…虚しくもやはり返事は無く、怒鳴った声だけが自分の脳をこだました。



将臣君は本当に私が死んだと…?
私が仮死状態になる薬を飲んでるって事、知ってるはずじゃなかったの?
どうして…こんな事になってるんだろう?



…でも現実に。
彼はもう、いない、いないんだ。

私が。
彼を絶望という名の淵に追いやった。









「私が彼を殺したんだ」

っっ…最低だ。
一番しちゃいけないことをしたんだ。

もし本当に彼と一緒にいたかったんだったら。
薬なんて飲まないで。
ちゃんと向き合って、認めてもらうまで。
両親と。家と戦えばよかったんだ…将臣君と一緒に。
それがどうしても無理なら他にも選択肢があったはずだ。
…彼と一緒に逃げることも出来たんだから。

でも彼はそれを言わなかった。
私が、私の両親を大事に思ってる事を…解っていたから。



どうすればいい?
どうしたら罪を償える???



思い出すのは彼の最期の言葉。

―会えると、いいな…―

「…それが将臣君の望む事?」
瞳を閉じた彼に問い掛けた。





解った。
それを貴方が望むなら。

私は将臣君の持っていた剣を構え、目を閉じた。



瞼を閉じても見えてくるのは彼の顔。
聞こえてくるのは彼の声。抱きしめられてる時に感じた彼の温もり。

全てがよみがえってくる。



ねぇ、将臣君…
もし来世とかでまた巡り逢う事ができたらいいよね。
だから、今から…行くね?

ぐっ。
手に力を入れて勢いをつけた。








―俺はお前の笑顔が、笑ってる顔が一番だと思うぜ。―

…カラン。
喉元に構えていた剣が地面に落ちた。



「っっう…っ」

その瞬間、瞳から絶え間無く涙が溢れ、止まらなくなった。





「出来ない…っ」

将臣君、ゴメンね。
私を怨んでくれていい。
貴方の最期の言葉ではなく。
一番だと言ってくれた言葉を優先しまった私を。



本当なら。
貴方を死に追いやった私は死んで償わなきゃいけない。




でも。
私が最期に思い出した将臣君の言葉。
"一番"を叶えるためには。








「私…生きなきゃいけないんだ」



私の罪も。苦しみも。
きっと一生消えることはない。
だからこそ。
自分の人生全てをかけて。
それを償っていかなきゃ駄目なんだ。



…彼が一番だといってくれた私を。
天国にいる貴方に見せ続けるから。
だから…それが終わるまでは。








私が生き抜く姿を見ていて欲しい



→あとがき

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