戦場の貴方に5のお題

□4、正しさを求めない君の強さ
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※恋愛(京)ED後



「弁慶さんは強いですね」
「…何故そう思うんです?」
「自分の成すべき事から決して目を逸らさない人だから」



そういった彼女は遠くの方を眺めていた。









…まただ。
またあの瞳だ。
彼女は時々、あの虚ろな瞳で遠くを見つめている。
あの瞳の先には一体何が映っているのだろうか?



「それを言うなら君のほうだと僕は思いますけど?」

彼女がどこか遠くへ行ってしまいそうな気がして。
平静を装いながらも内心急いで言葉を紡いだ。



「いいえ。私は…眼を逸らしそうになったこと、何度だってある、から」










「…後悔しているんですか?」

彼女がこういう風に言う時は心が叫んでいる時だと何時からか解るようになった。
彼女は「助けて」と口にしない人、いや…










口に出来ない人だから。



だからこそ今僕はこの言葉を言わなきゃいけなかった。
彼女の想いを受け止める為に。



「後悔は一度たりとだってしていません。
例えどんなに非難されようと。
どんなに間違ったことをしていると言われても。
…でもそれでも」

そう言った彼女の瞳には先程にはない「光」があった。それと同時に…「涙」があった。









綺麗だ。
彼女が泣いてる姿を見るのは辛いのに。
意志をもった瞳とその瞳に溜まった涙が対象的で…本当に綺麗だと思った。





そして…「儚い」とも思った。





…でも。

「それが君の強さですよ」
「え?」
「自分の弱さと真っ直ぐ向き合い、心を痛める…それは普通の感情です。君はとても優しい人だから…余計に」



「いぇ、私は―!」
「でもその"弱さ"と向き合ってでも。
例える正しくないと理解していても。
それをやり遂げ、そして後悔しないと、はっきり口にできる事…それが"強さ"です」
「弁慶さん…」
「普通は自分の弱さと向き合うことすらできません。…納得ができませんか?」
「…」



「では言い方を変えます。
…君のその"強さ"のおかげで今僕は生きている」
「―!!!」
「君が時空を遡って僕を救ってくれたから」
「べんけ、さ」





そう言ったら溜まっていた涙が頬を伝っていて。
だから彼女の細い肩を引き寄せ、僕の腕の中に閉じ込めて言葉にした。



「僕が思う以上に君の抱えているものは大きいんでしょうね。」
「わ、わた、しは」
「僕が死んだ時空以外にも、きっとあるんでしょう?」
「――っっ、どう、して」
「見ていれば解ります。君は時々、虚ろな瞳をするから。さっきもね。」
「ご、ごめんなさ」
「謝らないで下さい。…待ってますから、僕。」
「えっ?」




















君が話していいと思ってくれるまで。
ずっと、ずっと待っています。
だから…どうか泣く時は僕の腕の中で。



→あとがき

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