短編小説 ヒノエ×望美

□巡ってもたどり着くのは
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いつでも側にいてやれる訳じゃない。
交易があれば1ヶ月家を空ける事も稀じゃない。
寂しい思いをさせてる事も解ってる。



でもお前は「寂しい」なんて言葉は決して口には出さない。
「逢いたかった」とは言ってくれるけれども。
…言えばオレを困らせるって思ってるから。





それがオレにとっては実は寂しくて。
そして「不安」だと言ったら…お前はどう思うんだろう。





「望美」
「…何?」
「今幸せ?」

―オレは望美を幸せに出来てる…?―





「幸せだよ」
そう言った望美はとても柔らかな笑顔だった。

「…そっか」
「ヒノエ君は?」
「え?」
「ヒノエ君はどうなの?」
そう言い切った望美の表情が一瞬陰ったように見えた。



「オレは…」
「ヒノエ君間違えないでね」
「???」
「私幸せだけど…私だけ幸せじゃ意味が無いの。」
「…望美」
「私がヒノエ君を幸せにしたい」
「っ!!!」
「私はヒノエ君を幸せに出来てる?」





…まいったな。
望美はすごいよ、本当に。
オレが聞きたくても怖くて聞けないことをいとも簡単に言えるんだから。





「オレを"ヒノエ"を幸せに出来るのはお前だけだよ」
「だったらそんな痛そうな顔しないで?」

そう言った望美はオレを抱きしめてきた。
気付いたらオレは望美の腕の中にいて。
望美の心の臓がオレの耳に鳴り響いてそれが心地良かった。

「何度でも言うから。私はヒノエ君が好きだよ。好きな人の側にいれて…私幸せだよ」









そうやってお前は不安を取り除こうとしてくれる。
…オレを幸せにしてくれる。

だけどこの不安は一生消えることはない。
それは他ならない望美自身に関わることだから。
でもオレは望美のその言葉と笑顔で"また"幸せになれる。



オレは望美からたくさんのものを貰った。
人を愛する気持ちを。
人を慈しむ事を。
そして…望美自身を。

どれも望美に会わなければ決して知る事はなかった。









「望美」
「何?」
「ありがとう」
「…お礼言われる事じゃないよ」
「あぁ、でも言いたいんだ」


















悩んだってしょうがない。
だって結局は…










「好き」って気持ちに。

たどり着くのだから。




→あとがき

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