新・赤い流れ星

□新・赤い流れ星
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(もうすぐだ…!)



腕時計に目を落とした僕は、興奮で胸が高鳴るのを感じた。
そろそろカリスタリュギュウス流星群が流れると予測される時間だ。
なにやらものすごいパワーを持つという噂の流れ星。
昔から流れ星に願いをかけると、それが叶うって言う言い伝えがある。
まさか本気で願いが叶うとは思ってないけど、スピリチュアル面ではとにかく注目されている流れ星だから、僕にも少しくらいはそのパワーを受けることが出来るかもしれない。
言ってみればパワースポットみたいなもんだ。



今日はたまたま夜勤だったので、休憩を取って外に出て来た。
僕が働いているのは、郊外にある某大手通信販売会社の倉庫だ。
膨大な数の商品が並ぶ棚の中から、注文のあった商品を探し出すのが僕の仕事だ。
そこには、千人近い人間が働いている。
しかも、仕事中は話す暇はないし、休憩時間もまちまちだから、特に誰かと親しくなるってこともほとんどない。
それどころか、僕みたいに平凡で影の薄い者は存在自体、覚えてもらうことが難しい。
実際、僕だって、顔は覚えてても名前は思い出せなかったり、時にはその逆もある。
人が多いんだから、それは仕方のないことだ。



(それにしても…わくわくするなぁ…)



僕はベンチに腰掛け、夜空を見上げた。
このあたりは僕の家よりもずっと空が綺麗だし、今夜が夜勤でちょうど良かったと思った。
僕がいるこの公園は、人気がなくて静かな場所だ。
昼間はうちの社員達がお昼ごはんを食べたりして少しは賑わうけど、このあたりには倉庫以外なく、住宅地から離れている事もあって、夜は本当に閑散としている。



さっきから何度も時計を見ているうちに、ついに予測された時間がやって来た。
さぁ、いよいよだ。
僕が流れ星のパワーをもらいたい理由…それは、馬鹿みたいなことなんだけど、霊感を強くしたいということだった。
いや、霊感とは少し違うか?
幽霊が見たいわけじゃない。
僕は、子供の頃、おばあちゃんから聞いた河童の話がすごく好きで、いつの間にか本当に河童がこの世にいると信じるようになった。
もちろん、そんなことを言うとおかしな者扱いされるだろうから、外では言わない。
河童の他にも、天使を見ただの緑色のゴム人間を見ただの、妖精を見ただのと、そういう話は後を経たない。
この世には、目に見えない存在がいるということはずっと昔から言われながら、それがこの目で見られないのが悔しかった。
なにしろ、うちの家族はほとんどが霊感の欠片もない者ばかりで、心霊スポットに行っても何も感じないし、UFOも見たことはない。
河童を見たことがあるというおばあちゃんだけが、僕の一族の中で唯一霊感らしきものがあった人なのかもしれない。

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