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□†025:剣
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「これが……」

土の中で長い年月を過して来たであろうその木の箱は、さながら小さな柩のようだった。
その中に静かに横たわっていたのは、茶色い油紙包まれた一振りの剣。
特に華やかな装飾が施されているわけでもない、ごくありふれたような剣に見えるが、それがそのような剣でないことを青年は知っていた。
剣を鞘から引き抜いた途端、青年はそのことをはっきりと確認する。



「親父、ついにやったぜ!
俺は、番人の剣を手に入れた!」

体格は良いがまだどこか幼さの残る青年は、亡き父への言葉を語りかけながら剣を片手に高く振りかざす。
その声は、洞窟の中に心地良い余韻を響かせた。

青年は、掘り出したばかりの剣を腰に携え、それを眺めては嬉しそうに微笑んだ。
掘り出した箱はそのままに、青年はあっさりと洞窟を後にした。

外へ出た途端、彼の瞳を突き刺すような眩しい陽の光に、青年は片手をかざし目を細める。



「…さすがは、星の巫女だ……」

青年は、今一度剣を引き抜き、明るい陽の光の元でじっくりとそれを眺めすかす。



「しかし、たいしたもんだなぁ…
こんな細かい文字、どうやって彫ったんだ?」

感嘆の唸り声を上げる青年の視線は、刃の表面にびっしりと刻まれた小さな文字に注がれた。



「ま、そんなことは俺にわかる筈もないな。
そんなことよりこれからどうするか…ってことだが…
まずは腹ごしらえだ。
そして熱い風呂に入ってぐっすり寝て…
それからゆっくり考えるとするか!」

青年は、思ったことを口にすると、何かの替え歌らしきおかしな歌をを口ずさみながら、麓に向かって歩き始めた。


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