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□†041:吟遊詩人
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(さて、これからどうしたものか…)

父親の悲願であった「番人の剣」は手に入れた。
「番人の剣」が、「王者の心」の隠された場所の封印を解く唯一無比の剣であることをジェレミーは十分過ぎる程知っていたが、その「王者の心」が隠された場所については皆目見当も付かない。



(こんなことなら、あの巫女にもっと詳しいことを聞いておくんだったな…)

洞窟の場所を聞いたジェレミーは、とにかくそのことに心を奪われ、巫女とは挨拶もそこそこに別れてしまったことを、今更ながら深く後悔した。



(あんなに偶然巫女に出会うことなんて、この先もうないだろうな。
畜生〜!本当にうかつだった。
……そういえば…あの子、おかしなことを言ってたな。
出会ったのが私で良かったとかなんとか…あれは、一体どういう意味だったんだろう?
他の巫女なら教えてくれなかったとでもいうのか?)

ジェレミーにはその理由がわからないまま、街道沿いをただあてもなく歩き続けていた。



(まぁ、焦ることはない。
地道に進んでりゃ、きっとどこかでなんらかの手掛かりがみつかるだろうさ。)

持ち前の楽観的な性格に助けられ、ジェレミーが気ままな旅を続けていたある時、ふと立ち寄った小さな町で、彼は一人の年老いた吟遊詩人に出会った。

所々塗料の剥げた古いリュートを手に、老詩人は歌う。
その声は声量も乏しくかすれてもいたが、年輪を感じさせる味わい深い独特の雰囲気を持っていた。
どこか懐かしく、どこか物悲しく…
老詩人の歌が終わる頃には、ジェレミーの頬には一筋の熱い涙が流れ出していた。

広場の中央で恭しく頭を下げる老詩人に、集まった観客からは大きな歓声や拍手がわきあがり、自然とアンコールを求める声が高まった。



「では、皆さん、最後にもう一曲聴いて下さい。」

老詩人は、一言そう前置きすると、皺だらけの指でリュートをかき鳴らし歌い始めた。
その歌を聴くジェレミーの表情がみるみるうちに緊張したものに変わっていく…

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