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□2:地図
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(あぁ、くたびれた…)
ディヴィッドは道端の大きな石にどっかりと腰を降ろし、分厚いタオルで噴き出した汗を拭った。
(こんなに歩いたのなんて何年ぶりだ?
いや、何年ってもんじゃないな…何十年ぶりか…
……もしかしたら、これから毎日こんなに歩かなきゃならないのか?!
えーーーーーっ……)
まだ村からはほんの少ししか離れていないというのに、ディヴィッドの気力はすでに萎えていた。
しかし、いつもより動いたせいなのか、萎えた気力とは反比例してディヴィッドの食欲は異常に増していた。
(腹減った…)
村を出る時にもたされた昼食は、すでに食べてしまった。
手許にはもらった祝い金があるが、おそらく次の町に着くまで食べる所も店もないだろう…
ディヴィッドは村役場でもらったアイテムセットの中から、小さな地図を取り出した、
(なんだ、このいいかげんな地図は…
こんな大まかな地図じゃ、どこにあるかまったくわかりゃしない!)
そこに描いてあるのは、異常に大きく描かれたディヴィッドの村と、それより小さく描かれたこの国の都、さらに所々に山や湖の形が描かれてあるだけだった。
ディヴィッドはその地図を丸めて投げ捨てると、立ちあがりゆくりと歩き始めた。
(とにかく、何か食べられる場所を探さないとな…
町はどっちなんだ?!)
萎えた気力を奮い立たせるため、テーブルに並んだご馳走を頭の中に思い浮かべた。
(食べ物…食べ物…
食べ物はどこだぁ?)
ディヴィッドは夢遊病者のようにふらふらと街道を歩いて行く…
大量の汗をかきながら、亀のようにのろのろと…
しばらく進むと立て札が見えた。
その立て札にはこう書いてあった。
「次の村まで徒歩で約6時間」
「ろ、ろ、6時間?!」
張り詰めていたディヴィッドの心の糸が、ぷつんと切れる音が聞こえたような気がした。
ディヴィッドはその場にがっくりとへたりこむ。
(6時間も何も食べなけりゃ俺は死んでしまう…
第一、6時間も歩けるかってんだ!
デブは歩くのが苦手なんだぞ!!)
しかし、それならどうすれば…?
途方に暮れるディヴィッドの目に、周囲の山が映った。
(そうだ!山の中なら、果物や木の実があるかもしれないぞ!
川でもあれば魚もいるかもしれない!)
そう考えた途端、ディヴィッドは立ちあがり山の方へ歩き出していた。