book
□3:雷の中で
1ページ/1ページ
(あぁ〜っ、やっと出られたか…
だけど、あの魔物達…けっこう良い奴らだったな。
さて、とりあえず町に行きたいもんだが、一体どっちに行けば良いんだ…)
ディヴィッドが街道で佇んでいると、そこへ一人の若者が通りかかった。
若者の話によると、町へはまだずいぶんあるらしい。
(仕方ない…歩くか…)
街道を歩くうちに、ディヴィッドはあることにふと気が付いた。
そういえば、いつの間にかあんまり汗を書かなくなっていることに…
(山姥が、腹の肉を取ってくれたおかげだな!)
それだけではなかった。
毎日、険しい山道を歩き回るうちに他の部分の無駄な贅肉も筋肉に変わっていたのだ。
体力もうんと付いた。
山に入ってから出るまでに、体重が約20kgも減っていることにデヴィッドはまだ気付いてはいなかった。
若者の話によると、今夜中には町に着くだろうとのことだったが、こんな寂しい道を一人で歩くのも心細い。
なるべく明るいうちに町に着きたいと考えたディヴィッドは、懸命に歩き続けた。
以前のように、ほんの少し歩いただけで腹が減るということもなくなっていたが、夕方近くになるとさすがに空腹を感じるようになっていた。
(腹減ったなぁ…)
そんなことを考えながらディヴィッドが歩いていると、空がどんどん暗くなって来た。
夕暮れの暗さではない。
雨雲だ。
暗い空を見上げたディヴィッドの鼻先に冷たいものがぽつりと落ちた。
(やばい。
降って来やがったぞ!)
ディヴィッドは街道を走り出した。
雨足は急激に激しさを増し、そこに加えて眩い稲妻と雷鳴が空を駆け巡る。
(困ったなぁ…こりゃ当分やみそうにないぞ…)
雨宿りをする所はないかとあたりを見回すディヴィッドの目に、一軒の小さな家が映った。
街道からはずれた脇道にその建物は建っていた。
あそこで、少し雨宿りをさせてもらおう…
そう考えたディヴィッドは、小さな家を目指して土砂降りの雨の中を駆け出した。
⇒「4:占いの水晶玉」へ