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□4:占いの水晶玉
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「開けてくれ!
頼む、開けてくれ!」
ディヴィッドは辿りついた家の扉を叩く。
「誰じゃな…」
家の中から、低い声が返って来た。
「少しの間だけ、雨宿りさせてもらえないか?」
「雨宿りのう…」
ガタガタと音がして扉が開き、中から小さな老婆が顔を出した。
「お…けっこう良い男じゃないか。
雨宿りか…良かろう。
入りなされ。」
(良い男?!)
ディヴィッドはあたりを見まわしたが、そこにはやはりディヴィッドしかいなかった。
(そうか…年寄りだから目がよく見えてないんだな。
ま、俺にとっちゃあ好都合だが…)
「助かった、ありがとうよ。」
「おぉ、おぉ、そんなに濡れて…
すぐに風呂をわかしてやるから、濡れた服は脱いでとりあえずこれに着替えるがええ。」
老婆が出してくれたのは、ローブだった。
「おっ、すまねぇな!」
服を脱ぐディヴィッドを老婆はじっとみつめていた。
「なんだよ、婆さん。」
「いや、若い男に会うのは久しぶりなもんでな、
しかも、イケメン…ほんにええのう、イケメンは…ひーっひっひっひっ。」
相手は婆さんとはいえ、39年の人生の中でモテた記憶がほとんどないディヴィッドは、気持ち悪くもどこか嬉しい気持ちを感じていた。
風呂に入りディヴィッドがさっぱりして出て来ると、老婆が突然髪を切ってやろうと言い出した。
ディヴィッドの頭は、猿人の体毛をいいかげんにはりつけたせいで長さもばらばらな酷い髪型になっていたため、素直にその好意を受けることにした。
ついでに、旅に出てからめったに剃っていなかった髭も綺麗にしてもらった。
「おぉ〜〜っっ!
こりゃまたたいした男前じゃ…!!」
「もういいよ、お世辞は…」
「お世辞なもんか!
甘さの中に、若者にはない渋さもあって…
ほんにええ男じゃ…
あぁ、わしがもう少し若けりゃのう…」
老婆の瞳はすっかりハート型になっている。
(あ〜あ、婆さん、よほど人恋しかったんだな。
こんな所じゃ訪ねて来る者もいないだろうしな。)
「どれどれ、髪の毛はどんな風になったんだ?」
鏡をのぞきこんだディヴィッドは一瞬、言葉を失った。
ディヴィッドは何かを考えるようにしばらく目を閉じ、そして、再び、鏡をのぞきこむ。