新・赤い流れ星

□新・赤い流れ星
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(あ……)



そんなことを考えながらふと見上げた空に小さな星が流れた。
生まれて初めて見た流れ星に、僕の胸は高鳴った。
それは本当に一瞬のことで、瞬き一つするかしないかのうちの出来事だった。



(流れ星って早いんだな!)



呆然と夜空を見上げていると、目の端でまた一つの星が流れた。
流星群ということだから、これからもっとたくさんの星が降り注ぐんだろう。
それこそ、雨のように…
ロマンチックだな。
残念ながら休憩時間はそんなに長くないから、ピークとされる時間まではいられない。
今のうちに流れ星のパワーをたくさん受けたいもんだと考え、僕は目を瞑って祈るような形に指を組んだ。



(どうか僕の霊感みたいなものが強くなりますように…)



考えてみればちょっと恥ずかしい。
あと数年で三十路を迎える男の願い事としては、とても幼稚だ。
それ以前に、流星群の不思議なパワーを信じてるってこと自体、恥ずかしい事なのかもしれない。
まぁ、誰にも言ってないからバレることはないから良いけど。
逆に言うとこういうことを話せる友達や彼女がいないことが一番恥ずかしいことなのかもしれない。
友達はいるにはいるけど、僕はいつもどこか良い格好をしてしまうっていうのか、本音を言えない所がある。
別に隠すようなことじゃないといわれるかもしれないけど、それでもやっぱり恥ずかしい。
目に見えない者の存在を信じてるなんて、なんだかまるでサンタクロースを信じる子供みたいな気がして誰にも言えないんだ。
特に僕の家族は、皆、そういうものを信じてないから、家でももちろん話せない。
ネットでその手のサイトをのぞいては、僕と同じような考えの人がたくさんいることを知って安心し、僕も書き込みをしようかなと考えてたりすることが僕のささやかな楽しみ……結局、いつも送信ボタンは押せないんだけど。



そんなとりとめのないことを考えている時、僕は暗い目の奥に妙な違和感を感じた。




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