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□†025:剣
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青年の名は、ジェレミー・ハンプシャー。
彼が、初めて「番人の剣」のことを知ったのは、彼がまだ幼い頃のことだった。
彼の父親が、行商の帰りにある町の市で一枚の地図を手にしたのが全ての発端だった。
それ以来、彼の父親はまるで人が変わったようにその地図にのめりこんでいった。
そこに描かれていたのは、宝の在り処。
それ自体にはそれほどの価値があるというわけではないが、とても重要なもの…
この世界の誰もが知る至宝「王者の心」が隠された場所には強力な封印が施されており、それを解くことが出来るのは「番人の剣」だけ。
地図には、その「番人の剣」の在り処が描かれていたのだった。

ジェレミーの父親は、市を見て歩いているうちに見知らぬ男に声をかけられた。
その男に、このお宝を見つけ出すことが出来るのはその使命を与えられた者だけで、それこそがおまえだと言われたのだという。
ジェレミーの父親は、真面目だけが取り柄のような男で人一倍責任感も強かった。
それが悪いほうに作用したのか、そのうち、彼の父親は仕事も忘れ、番人の剣を探す事にのめりこんで行った。
地図には、番人の剣の隠し場所である洞窟の周りの状況が描いてあるだけで、それがこの世界のどこらへんにあるのか、手掛かりになるようなことは何一つ描かれてはいなかった。
この世界にある洞窟のすべてをあたることなど、一生かかっても出来る筈もなかったが、彼はあちこちを旅しながらその場所についての情報を集め歩いた。
その間にも、残された家族の暮らし向きはどんどんと傾いていった。
蓄えの大半は彼が旅に出る時に持ち出しており、仕方なく母親が働き出したが、それだけでは足りないため、幼いジェレミーと兄も働いた。
学校にもほとんど行かず、毎日、朝早くから畑の手伝いや鉄くずを拾って回った。
やがて、兄弟も成長し、どうにか父親のいない暮らしも安定して来た頃、旅先で父親が病に倒れたという報せが家族の元に舞い込んだ。


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