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□†041:吟遊詩人
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「すみません…!少しお話を聞かせていただきたいんですが…」

アンコールも済み、僅かばかりの荷物とリュートを手に広場を立ち去ろうとしている老詩人にジェレミーは声をかけた。



「なんですかな…?」

「あの…歌、すごく良かったです。
感動しました!」

「それはどうもありがとうございます。」

老詩人はジェレミーのその言葉に、垂れ下がった瞼をさらに細め、嬉しそうに微笑んだ。



「あの…それで、最後のあの曲のことなんですが…
あの歌詞について詳しく教えていただきたいのです。」

「……あなた……もしや北斗七星の巫女を探しておいでなさるのか?」

「えっ!で、ではやはりあの歌は……!」

老詩人は、ただ、黙って頷いた。



「あそこに座りましょうか?」

老詩人は、つい先程まで観客が椅子代わりにしていた木箱を指差し、二人はそこに並んで腰を降ろした。



「いかにもあの曲は、北斗七星の巫女について歌ったものですが、すべてが真実に基いたものではないのです。
一部…不明な部分は、私の創作です。」

そう言いながら、老詩人は、その歌詞を朗読し始めた。

「七人の娘は月と月の間をさ迷う
フェクダの頭上には輝く王冠
メラクは金の聖杯に美酒を湛え
メグレズは呪文の剣を手に
アリオトは薬指の指輪を掲げ
メザールは蝶のように舞い踊り
アルカイドは声高らかに歌い
最期に、ドゥーベは白い地図を差し出す
王者の心はこれであなたのものだと…」

節をつけずに歌詞を朗読されただけでも、老詩人の発するその言葉にはなにかしら感じるものがあり、それこそが熟練した老詩人の実力のようなものなのかとジェレミーは心の中で密かに感心した。



「……しかし、なぜ、これが北斗七星の巫女を題材にしたものだと思われたのです?
私は今までにも何度もこの曲を歌いましたが、そんなことを言われたことはありませんでした。」

「……実は……」

ジェレミーは腰に携えた剣の柄に手をかけゆっくりと引抜いていく。
その動作に、老詩人は驚き身構えたが、それが危害を与えるためではないことを老詩人はすぐに理解した。



「ま…まさか…!
その剣は……!」

ジェレミーは黙って頷くと、三分の一程姿をのぞかせたその剣を静かに鞘に収めた。


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