スメラギは目の前に突然現れた薔薇の花束に、目を丸くさせた。

「えっと…なんだったかしら」

いくつかの記念日を思い出しながら、そのどれにも当てはまらなくて、スメラギは困ったような顔をした。
ロックオンはそんなイベント事に興味のないスメラギの様子に、苦笑しつつ、棘を抜いた一輪の薔薇を彼女の髪に差し込んだ。

「バレンタインデーだよ」

何だろうかとドキドキしながら、髪に差し込まれた薔薇を落とさないように、と手を添えたスメラギはロックオンの言葉に瞬いた。

「えっ!今日なの?!」

日にちを思い返せば今日だ。
だが、聞かずには居られなかった。
ああ、やってしまった。
ひと月前にクリスティナが今年もジャパニーズスタイルのバレンタインを行う旨を言っていた。
その時にスメラギも、ロックオンに何か贈り物をしたいと考えていた。
…その時は。

「何となくわかってたから、気にするなよ」

アイルランド式だ、とロックオンはスメラギの頬を撫でる。
嬉しいと恥ずかしいが入り混じったスメラギの頬は赤い薔薇にも負けない色に染まっていた。
ああ、可愛いな、と年上の女に思う。

「…わたしも贈りたかった…」

ごめんなさい、とオリーブグリーンの瞳に見つめられて、ロックオンは微笑む。

「じゃあ、来年は前もって言うよ」

二人きりで過ごすのも良いな。
トレミーから降りて。
地球でも良いし、ソレスタルビーイングの秘密基地でも良いし。
ロックオンは予約とばかりにスメラギにウインクしてみせた。

「ええ、お願い」

やっと笑ったスメラギに嬉しくなって、ロックオンはその腰を抱き寄せる。
スメラギは、贈り物は出来なかったが、せめて気持ちは伝えたくて、ロックオンの耳元に唇を寄せた。

「…ニール、Gràim thù」

ロックオンの国の言葉で、単純に。
間近でアイスグリーンの瞳を見つめれば、薔薇の花束を潰さないように抱きしめられた。
自然と、唇と唇が重なって離れた。

「じゃ、また後でな」

ウインクの様に片目を閉じたロックオンは、指鉄砲でスメラギの胸を撃つポーズを取って、部屋から出て行った。
残されたスメラギは薔薇の花束を抱えて微笑んだ。
ふと、花束の中にメッセージカードを見つけた。
取り出して開けば、同じ言葉が現れた。

≪ Gràim thù ≫

愛しています





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