小説2

□悪(アタシ)をもって悪(アンタ)を制す!
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「あんたなんでそんなにはしゃいでんのよ。みっともないったらありゃしない!」


洗いたての髪を湿らせたまま少女は彼(女)の隣にドカッと腰を下ろした。


タオル一枚に隠された白いやわ肌から香る石鹸の香が鼻を擽り、それと全く系統の違うバニラエッセンスの濃く甘い芳香が自分から匂うことにワイルドは苦笑する。


(確かにアタシははしゃぎすぎかもしれないわねぇ)


クリスマスもイースターも心が騒ぐイベントではあるが、ハロウィンとは違う。あれは恐怖がチリチリと心を焦がすために感じるスリルであり、心地よいものではいない。
しかし、ハロウィンはどこか開放的になれるものなのだ。


「ねえ、ザンビア」


「なによ」


焼きたてのパイにフォークを刺した友人は相変わらずあられもない姿でベッドに足を投げ出している。彼らのもう一人の同世代の友人がそれを見たなら眉間に深く皺を刻むだろうが、ワイルドはただ「綺麗な足だこと」と鼻で笑っただけだった。


「この部屋って意外とシンプルよね。それでも女の子なわけ?」


「ザンビアに言われたくないわよ。アンタこそもうちょっと気を遣ったらどう。鍋とか箒とか散乱してて足の踏み場がないじゃない」


「あら、ちゃんと歩けるわよ。少なくとも三人は座れるくらいのスペースはあるわ」


ガウンをクローゼットから取り出して放り投げると少女は片手で受け取り、袖を通す。ふわりと踊る髪から石鹸ではない匂いが香ったのをワイルドは見逃さなかった。


(素直じゃないのね)


仕方のない子なんだから、と彼(女)が焼きたてのお菓子達を包んで立ち上がるのをザンビアは不思議そうに見つめる。菫色の瞳が揺れた。


「三人入れれば上等よォ。たまにはザンビアちゃんの散らかったお部屋でパーティーってのもイイんじゃない?」


「なっ……」


バニラの匂いがする。隠そうとした淡い香り。


「ねだってあげるわよ。三世と二人で。アンタの焦げ焦げのお菓子をね」


むしろtrickの方がマシだったかも、と三世が青ざめるのまでのカウントダウンは始まっている。


アタシをもってアンタを制す!


悪と悪がぶつかって調和。二人はやはり悪友だった。


(可愛い子)


(何よ大人ぶっちゃって、気持ち悪い!)



End

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