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□second kiss
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真っ赤になった山本が俺に好きだと言って、俺は小さく頷いた。
ふと顔を上げた俺に、山本が触れるだけの短いキスをした。
心臓が、止まるかと思った。












……のが2週間前。


その小さなキス以来、俺たちは恋人らしいことを全くしていない。
俺は山本の部活が終わるのを待たずにさっさと帰る。
待っていた方がいいのかとも思ったが、待っていろと言われたわけでもないのにそうするのも癪だった。
部活を終えた山本はウチに寄り、喋ったりテレビを見たりして帰っていく。
付き合う前と何も変わらない。


男同士だしそんなもんか、とも思ったが、どうしても、あの時の感触が忘れられない。

もう一度、欲しい。


急に恥ずかしくなって枕に顔を埋めた。
と同時に、あいつが能天気に出前に行ってる姿を想像してむかついてくる。



なんだよ、山本のくせに。
明日、問い詰めてやる。
かなり恥ずかしい事態が予想されるけど、こんな微妙な関係のままいるのは嫌だ。







放課後、俺は山本の部活が終わるのを待つことにした。
朝はあいつは朝練で先に行くし、昼休みは10代目もいらっしゃるから話せなかった。



グラウンドから、あいつの声が聞こえてくる。
頬杖をついて窓外を見ると、楽しそうに笑うあいつがいる。

俺に好きだと言ってキスをしたきり何もしてこないあいつが友達と笑っている。


机に突っ伏して目を閉じる。
俺たちって、なんなんだろう…。

好きってそういう好きじゃねぇの?
俺たちは恋人になったんじゃねぇの…?


やばい、泣きそうだ。






「獄寺?」



驚いて顔を上げると、意外そうな山本と目があった。

「グラウンドから見えたから来てみたんだけど、もしかして待っててくれたの?」
「……別に」
「でも嬉しいよ。一緒に帰ろうぜ?」
「勝手に帰れよ。俺はひとりで帰る」
「え、なんで……?」
「一緒に帰る理由ねぇし」
言った。
お前はなんて返してくる?


「なんで、理由ならあるじゃん。俺たち付き合ってんじゃねぇのかよ」


欲しかった言葉がもらえたのに、まだ治まらない。

「だったらなんで」

ここにきて予想通り恥ずかしくなった。

「なんで……」


山本が一歩、俺に近づく。
視界が少し暗くなって、山本と、俺の、唇が重なった。

前より少し長くて、息が苦しかった。

静かに離れていく山本の唇から吐息がこぼれる。


「急にごめん。なんか獄寺、泣きそうな顔してたから…」

「別に、謝ることねぇけど…」

「なぁ、俺らって、付き合ってるってことでいいんだよな?」
「違うのかよ」
「なんか、あれからも友達と変わんない感じだし、俺が好きっつったの友達として受け取られちゃったのかなとか、外国だとキスなんて挨拶みたいなもんだっていうし…」


……え。
何こいつ、何言ってんだよ。


「だから、もしそういうつもりじゃなかったらイチからやり直さなくちゃいけないし、やたらキスとかしてウザがられたら嫌だし…でも今日待っててくれたみたいだし…」
「もういい」
「え……ごく」


これで、3度目。


背中に腕が回されて、強く抱きしめられた。









「さっ、帰ろうぜ♪」
いきなり握られた手を、俺は咄嗟に離してしまった。
それでも、もう山本は戸惑ったりしない。
「あのさ獄寺、悪いんだけどさ、今度から俺の部活終わるまで待っててくれねぇ?一緒に帰りたいからさ」

「……しょーがねぇな。終わったら即行で来いよ?部室で喋ってたりとかしたら殺すからな」











END
+++++++++++++++
…長い(一言)
ひとり悶々とした挙げ句、結局ぜんぶ山本に言われ(せ?)ちゃった獄寺が書きたかったんです。
ていうか…
『〜…のが2週間前』が書きたかっただけです。すいません。

中学生の恋愛って、付き合ってんだかそうじゃないんだかな微妙な時期ってあるよなぁ…と思って書き始めたんですが、今時の中学生さんはもっと器用ですかね(汗)
てかキスしてて微妙もないか(汗)
あれ……

えっと…
自分からちゅーした獄寺を誉めてあげてください。


アトガキが無駄に長くてすみません。
お粗末様でした!
2008.09.01
黒川


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