Novel

□銀色の猫
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「白銀っ…」

「しっ…声を出さないで」

昶の口を手で押さえる白銀。

狭い空間のため 起き上がる事ができず、横になり抱き合う形になっている。



息を殺す二人。

「どうして…?」

「え?…ああ、何となく 昶君が会いたくない人なのかなと思いまして…すみません。とっさに これしか思いつかなくて」

「…いや…ありがとう…白銀」

昶は 白銀にしがみついた。

「ふふっ…どういたしまして。大丈夫ですよ…私がついてますから…」

白銀は そっと昶を抱き締めた。



暫くして 部屋の扉が開いた。

「あら。いないの? 靴はあるのに…おかしいわね」

暫くすると、部屋の扉が閉まった。



「行ったみたい…ですね」

昶は答えず、未だに白銀にしがみついている。

「もう大丈夫ですよ 昶君」

それでも尚 何も答えない昶を見て 白銀は直感的に何かを感じた。



「もしかして今の人…昶君のお母さん…ですか?」

小さく頷く昶。

「いつもはろくに家にも帰って来ないのに…どうしたわけか…」

「昶君の顔を見に来たのでは?」

「…んなわけねえだろ…」

昶は 白銀の胸に顔を埋めた。

「昶君…」

昶の頭をそっと撫でる白銀。




「あの…そろそろ出ませんか? 狭くありません?」

「…そうだな。出るか」



昶がベッドの下から出た瞬間、部屋の扉が開いた。



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