Novel

□気付いた気持ち…止められない想い…
1ページ/3ページ


『似ている』

最初はただ、それだけだった。
いつからだろう。君を目で追うようになったのは─






人間の世界へやって来てから、大分経った。
正直、ここへ来るのには、あまり気が進まなかった。
今までずっと闇の中で生きてきた自分が、光の中へ行くなど…。それに、自分の新たな対の存在を…認められなかった。



俺の対は、"彼"だけ…彼が死んでも尚、そう思い続けていた。
だが、そうも言っていられない状況に陥ってしまった以上、俺が動くしかなかった。


光と影のバランスを保ち続ける事…それが俺の使命。



慣れない空気に体の不調を覚える事も多々あったが、今ではすっかり馴染んできている。
それはきっと…



傍に"君"がいるから。





彼に比べれば…

君は



弱い。



力だけではなくて…



心も…






それに、出逢った当初は
闘いに対する"本気"が感じられなかった。

きっと、まだ 幼な過ぎたんだ。
そんな君に突然、無理を承知で協力を頼んだ事は…正しかったのか、間違っていたのか…
迷うところがないと言えば、嘘になる。



でも、



君しか いなかったんだ。

彼がいなくなった今、代わりをつとめられるのは…
この世界で






たったひとりだったんだ。





最近、その力に 変化が見られるようになった。
その中で時々、見え隠れする…



彼の存在




もしかしたら、彼が 君に力を貸してくれているのではないか とも思う。

だからといって、彼と君は…違う。
例え生まれ変わりであっても…違う。同じであるはずがない。それなのに…俺は君に、彼を重ねてしまう。こんな事を言ったら、彼は…そして
君は怒るだろうか。





寝ている君は、本当によく似ている。
気付かれないように、そっと頭に触れ、撫でる。



「劉黒…」



自分でも無意識のうちに、そう口にしていた。



何故だ。
何故君は…こんなにも



似ているんだ。




気が付くと、君の頬に触れている自分がいる。



温かい。

人間の感触が…
温もりが…
こんなに温かいものだなんて…思いもしなかった。
これは…彼に対しては覚えなかった感覚。何故なら彼は…俺と同じく、人間ではなかったから。



君の"本気"を感じるようになってから…
いつの間にか、知らず知らずのうちに…



君に


惹かれていた…



もっと…もっと、この温もりが欲しい。
自分だけのものにしてしまいたい。

願ってはいけない事なのに、願わずにはいられない自分。




姿形は確かに…彼そのもの。
でも、
その温もりは…
他の誰のでもない、

君自身のもの。





今、改めて気付いた。

彼が死んで…
ひとり 孤独に怯え、
冷えきってしまった心を温めてくれたのは…



君だったのだ、と。




君はいつも、太陽のように眩しく輝いていた。

光を浴びる事を恐れ、闇に閉じ籠っていた自分。それを解き放ってくれたのは…


君だったのだ。



いけない、と分かっているのに…もう…止まらない。止められない。





無意識なのか、意識的なのか、俺は…



君の唇に 自分のそれを重ねていた…





劉黒…

もしも今 何処かで、俺を見ていたら…



…許せとは言わない




いや…言えない



言えるはずがない



俺を許すな…劉黒。



過ちを犯してしまった俺を…。




ただ、今だけは…
このままでいさせて…




君の温もりをただ…

感じていたいから…




例え 君に拒まれても…

その瞳が光を映すまでは…



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ