Novel
□二人だけの夏
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今日から夏休み。
友達が少ない昶は、特に何処へ出掛ける事もなく、家にいる事が多い。
今日は、ひとりでゲームに没頭している。
それを、横に座って見ている白銀。
今は昼間。
「昶君」
「ん?」
「実は今日…ワタシの誕生日なんですよ」
ゲームをする手を止め、白銀を見る昶。
「えっ…そうなのか?」
「はい♪」
にっこりと微笑み、白銀が弾んだ声で言う。
「おめでとう…」
ぼそっと、呟くように言う昶。
「昶君…ありがとうございます♪君にお祝いして頂けるなんて…ワタシは幸せ者ですよ〜♪」
「そうかよ…」
再びゲームを始める昶。
「昶君…」
「何だよ」
「ワタシ…欲しいものがあるんです…」
「欲しい…もの?」
「ええ…」
暫しの沈黙。
「俺が知ってる…ものか?」
「え?」
「いや…だからその、お前が欲しいもの…」
「…」
ゲームに夢中の昶を見つめる白銀。
「それは…近くにあるのに…手に入らないもの…です」
「近くにあるもの…か」
ゲームをしながら、呟くように昶は言う。