Novel

□想い人
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夏休みが終わり、今日からまた学校が始まる。



「昶君。起きてください〜遅刻しちゃいますよ!」

昶を揺する白銀。

「ん…あと5分…」

そう言いながらも、全く起きる気配がない昶。


「もう…仕方ないですねェ」

白銀は横を向いている昶をそっと仰向けにさせた。

それに気付き、少しずつ目を開ける昶。

「…何だよ白…んっ…」

昶に唇を重ねる白銀。
それに応え、そっと唇を合わせる昶。



暫く口付けを交わすと、唇を離した。


「行きましょうよ〜学校」
微笑む白銀。


「…分かったよ」



昶は着替えると、準備をして家を出た。





「なんか…久しぶりだな、ちゃんとした時間に学校行くのって」

歩きながら昶が言う。

「ふふっ…そうですねェ〜。でも、大丈夫ですよ…」
「え?」

昶が首を傾げると、白銀は昶をじっと見つめる。

「これからは…」

昶の耳元に顔を近付ける白銀。



「毎朝……お目覚めのkissしてあげますから…」

囁く白銀。

「なっ…お前っ…」

昶は声を荒げる。

「顔、真っ赤ですよ」

昶を覗き込む白銀。

「っ…うるせえ!」

白銀を置いて歩き出す昶。

「もう〜照れちゃって…本当に、かわいいですねェ」

「なっ…お前…俺をからかってんのか?」

「そんな〜ワタシはいつだって、本気ですよ?」

ふと、白銀を見る昶。
白銀はにっこりと微笑む。

その笑顔を見た途端、鼓動が早くなる。



俺は…
こいつの"笑顔"に弱いんだ…



「昶君?」

黙っている昶を見つめる白銀。


白銀には答えず目をそらし、歩く速度を早める昶。

後ろから追いかけてくるのを背中に感じながら、自然と顔に笑みが浮かぶ。



お前の笑顔…好きだ

誰にも見せたくない…

俺にだけ見せて欲しい…


そんな事さえ思ってしまう自分。



振り返ると、それに気付き微笑む白銀。


高鳴る胸の鼓動。


白銀の笑顔…
仕草…
声…

その存在の全てが…俺を優しく包み込む。



あぁ…俺は本当に…
白銀を…


好きなんだなあ…



白銀の瞳に今 俺が映っているだけで…嬉しい

もっと…追いかけて…

捕まえられるものなら、捕まえてみろ…


白銀に笑いかける昶。

白銀は少し驚いたような顔をする。



もっと…俺を見つめて…




白銀の瞳に映っているのは…俺だけ
そう思っていた…



昶の後ろ姿を見ていた白銀は、一瞬 ぴたっと動きを止める。

誰かが、昶に重なって見えたからだ。



「…劉…」

呟く白銀。


「ん? 何か言ったか?」

昶が振り向く。


「えっ…いえ〜何でもありません♪」

微笑むと、白銀は昶についていく。



さっき、確かに…見えた…

劉黒…



昶に重なって見えたのは…



劉黒だった…


二人を少し遠くから見ていた賢吾。


「なーんか最近あの二人…仲良いよな…」

暫く考え込む賢吾。



「もしかして…」





始業式が終わり、帰ろうと教室で準備をしている昶。

「なあ、昶〜」

賢吾が話しかける。

「何だよ」

面倒臭そうに返事をする昶。



「白銀さんと、付き合ってんの?」



「……はあ? 何言ってんだお前」


「いや〜最近二人、仲良いからさ〜」

少しにやけて言う賢吾。


「…んなわけねえだろ」

「隠したって無駄だよ〜見てれば分かるって」


「お前…これ以上妙な事ぬかすと、ぶん殴るぞ!」



「痛って…もう殴ってんじゃん…」



昶は教室を出た。





「白銀」

歩きながら呟くように言う。
反応はない。



黙って考え込んでいる白銀。



何故…劉黒が…

死んだんじゃ…なかったのか…?



「おいっ 白銀」

「…あっ…はい?」

昶の声にはっと気付く白銀。

「さっきから何度も呼んでんだけど…」

「すみません、考え事してまして…」

「ふ〜ん。それよりお前…誰かに言っただろ…」

歩きながら昶が言う。

「え? 何をですか?」

「…だから…俺達の事…」
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