天才晶術師の章

□fateー1
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 セインガルド王国、首都ダリルシェイドを目指し大空を舞う飛行竜、ルミナ・ドラゴニス号。


 数人の男の騒がしい声を聞き付け、一人の少女は眉をひそめながら甲板へと出た。

「…何を騒いでいるの?」
「ルナ様っ!実は貨物庫にこの男が…」

 衛兵の一人が隅に立つ金髪の青年を目で示した、ルナと呼ばれた少女はそちらに目を向け、ゆっくりと近寄った。

「…密航者か、こんなときに」
「密航!?オ、オレはただセインガルド王国に行きたくて…勝手に乗り込んだのは悪かったけど…」
「…あのね、それを密航って言うのよ…」

 呆れたと言わんばかりにルナはため息をはいた。

「まったく…あなた名前は?」
「スタン、スタン・エルロン」
「そう…スタン、どうしてセインガルドへ?」
「えぇっと…セインガルド王国の兵士になりたくて」
「なら、船でセインガルドに行けばいいじゃない…」
「いや、その…お金が無くて…」

 スタンのその一言にルナはもう一度ため息をはき、警戒を解いた。

「どうやら嘘ではなさそうね…甲板掃除でもさせといて」
「よ、よろしいのですか?」
「なんか気が抜けたわ…あなた達も持ち場に戻って」
「はっ!わかりました!!」

 スタンを取り囲んでいた衛兵達はバラバラと散っていき、一人がモップを持ってきてスタンへ手渡した。

「それじゃ、しっかりよろしくね…足代ってことで…」

「あ…セインガルドまで乗せてってくれるのか?」
「悪意ない人をむやみに捕まえたりはしないわ」
「そっか…助かったよ!ありがとう」
「…別に」

 そっけなく返すとその場を去ろうと踵を返した。

「…見た感じ責任者…だよな?…オレより年下に見えるけど…」
「…多分年下じゃない?15歳だし」
「じ、15!?はは…オレより4つも年下…凄いな」
「そうでもない…凄くなんか、ない」
「いや、凄いよ!うん」
「……」

 ルナが何か言おうとしたその時だった、けたたましい音が辺りに鳴り響いた。

「なっなんだ!?」
「大変ですルナ様っ!前方よりモンスターの大群が!」
「モンスター!?」
「凄い数です!!」
「く…どうしてモンスターが…総員第一級戦闘配備!!」

 甲板へモンスターが下りてくる、ルナは腰の杖を取り構えた。

「スタン!!あなたは中にいて!」
「そんな!オレも戦うよ!」
「モップで何が出来るのよ!いいから早く!!」
「わ、わかった…」

 衛兵に剣を取り上げられたのを思い出し、スタンは慌てて中へと駆けていく。

「…数が多い、カイト!援護を!」

 ルナが叫ぶと、物影からグレーの影が飛び出し、足元に降り立った。

「妙だな、いくらレンズの力で凶暴化しているとはいえ、モンスターが飛行竜を襲うとは…」
「…アレが目的なんじゃなくて?」
「さあな、くるぞルナ!!」
「わかってる!"偉大なる大地の力よ!"エアプレッシャー!!」






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