天才晶術師の章

□fate-7
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 カルバレイス、チェリク港を出発した船は、フィッツガルド、ノイシュタット港を目指し海をいく。

 その船の甲板に、ルナは一人海を眺めていた。



「……仲間、かぁ…」



 ぼんやりとしていたが、人の気配を感じ、視角になっていた木箱の影から出入り口を覗く。


「あ…(リオン…)」




『坊ちゃん、大丈夫ですか?』
「ああ…多分な」
『ほ、ほら!前にルナに貰った酔い止め…』
「……ああ」


 ふたりの会話をルナは木箱の影に隠れ聞いていた。


(極度の船酔いなんだ、リオンって…)












「…ふぅ」
『船室で横になっていた方がいいんじゃないですか?』
「…なぁシャル、カルバレイスを出てから僕はずっと考えていたんだ…」
『スタン達の…事ですか?』
「ああ…僕は正直戸惑っているんだ」
『信頼できる人が傍にいる事はいいことじゃないですか』
「それは…分かっている、だけど僕は今までずっとシャルとふたりだった、何でもふたりでやってきた…子供の頃、シャルと出会えたからこそ、僕は生きてこられたんだ」
『そんな、大げさですよ』

(子供の時からソーディアンと…?それに…)

「違うよ、シャル、僕は本当にそう思っている…だからあいつらを仲間だと考えるのはお前を…」
『ありがとうございます、僕の事を気遣ってくれて…でもね、坊ちゃん、それは違います…僕は嬉しいんですよ』
「嬉しい…?」
『これまでの坊ちゃんには夢が少なすぎました、ヒューゴ様をこえたい、マリアンと一緒にいたい、これだけじゃ全然足りないですよ…友人と一緒に旅をしたい、とか、一緒に買い物をしたい、とか…そんなささいな事でもいいんです』

「……(なんだかシャルティエに対しての喋り方、いつもより優しい…)」

「いや、しかし…」
『僕らが人間だった頃にはそんな経験できませんでした…戦争でしたからね、ディムロス達はやっぱり友人じゃなくて戦友なんです、それに坊ちゃんが多くを望めば一緒にいる僕も楽しめるって寸法ですよ』
「……全く、なんて下手な説得なんだ…」




 リオンの気配が消え、ルナは大きくため息をついた。


 甲板に座り込み、空を仰ぐ。



「長い付き合いなんだ、リオンとシャルは…まるで兄弟みたいな…」

 彼女はハロルドの杖を取り出し、空にかざした。



「……わたしは…カイトがいる…でも…」


 今、傍にカイトの姿は無く、またため息をついた。



「…そう言えばさっきヒューゴ様をこえたい、って…それにマリアンと一緒にいたい、って…」

 一つの仮説がルナの頭に過ぎり、立ち上がる。






「まさか…彼は…リオンはヒューゴ様の息子の……エミリオ…?」













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