天才晶術師の章
□fateー2
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「スタン君達はこれからどうするのかね?」
「俺は…ダリルシェイドに向かおうと思っています」
「わたしも…です、やらなければいけない事がありますし」
「そうか…ここからだとジェノスの街を経由する必要があるな…よし、ではわたしがそこまで送ろう」
「え〜っ!?ウッドロウ様行ってしまわれるのですか…?」
チェルシーが残念そうな声を上げる、ウッドロウは『帰ってこいと言われた』とチェルシーをなだめ、三人は支度に取り掛かった。
「おっと!」
アルバの小屋を発って数時間、スタンが雪に足を取られ声を上げる事数回…、平気で歩くルナを見てスタンは尋ねた。
「ルナは…慣れているのか?雪道」
「前に何度か来てるし、この程度、なんてことはない」
「そっか〜さすがだな…」
「随分戦い慣れているようだしね」
横からそう、ウッドロウが口を挟む。
「仕事…ですから」
そう言いながら杖を取り出し、力を込める。
「光よ!-ライトニング!!」
雪玉の中から飛び出したモンスターへ狙い違わず雷が落ちる。
「ひゃー…俺気がつかなかった…」
「ふむ…」
「これくらいは当然です…それにあなたに怪我をさせるわけには…いかないですから」
するとウッドロウは少し後ろに下がり、彼女に小さく囁いた。
「その様子では、わたしが何者かは知っているようだね」
「生まれはこの地ですから…まさかお目にかかれるとは思っていませんでしたけど」
「なるほど…しかしかしこまる必要はない、普通に話してくれて構わない」
「し、しかしっ」
「わたしが良いと言っているのだ、誰も君を咎めたりはしない」
「…はい」
やがて視界が晴れ、街が見えてきた。
「無事に着いたようだな、では、わたしはこれで」
「ありがとうございました!」
スタンがお礼を述べ、ウッドロウが去ろうとしたその時だった…。
『おい、ウッドロウとやら』
突然声が響いた。
(あ、ディムロスの声…やっぱりわたし、聞こえるんだ)
「ディムロス!?なんだよ突然…失礼だろ!」
『我の声が聞こえているなら詫びよう、聞こえないのならば関係ない』
「ディムロスっ」
「…また会おう」
ウッドロウはそのまま去っていった。
『気のせいか…?我の存在を認識しているように思えたのだが…』
「気にしすぎじゃないのか?」
そんな二人(?)のやり取りを聞きながらルナはぼんやり考えていた。
「そういえば…ファンダリアって確か…」
『…!』
ルナの呟きに、ディムロスが反応した。
『…(この者も…もしや我の存在を…?)…おい』
「な、なんだよディムロス」
『お前ではない、ルナとやら、我の声が聞こえているか?』
「えっ?」
スタンも驚きルナを見たが彼女は何も反応せず、ウッドロウが去っていった方を眺めていた。
「(なんか話しかけられてるけど…いいや、知らん顔)…いっちゃったな、ウッドロウさん…また会えるかな…」
『……聞こえてはいない、か』
「ディムロス…?」
「…なんか冷えてきた、スタン、とりあえず宿をとって休憩するわよ」
「あ、うん」
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